読み逃し文学…「西の魔女が死んだ」

不登校になったことをきっかけに、英国人のおばあちゃん=西の魔女の元でしばらく暮らすことになった、中学生の”まい”。自然に囲まれた田舎の家で、まいは「本物の魔女」であるおばあちゃんに教わり、「魔女修業」をします。

修業はまず、自分の手足を動かして毎日丁寧に生活し、自分が決めたことを守ることからはじまります。そうして「一定のリズムで心地よく暮らすこと」を学ぶのです。それで魔女になれるの?と思うかもしれませんが、いやいや、何事も基本が大事です(耳が痛い

「魔女の心得」についても、もちろん教わります。おばあちゃんは、

大事なのは自分で見ようとしたり、聞こうとする意志の力。

自分で見ようともしないのに何かが見えたり、聞こえたりするのはとても危険。不快で一流の魔女にあるまじきこと。

ときっぱり。(P.96) また、

自分の直観を大事にしなくてはいけない。けれども、それに取りつかれてはいけない。

直観に取りつかれると、激しい思い込み、妄想となって、その人自身を支配してしまう。


そして、

「あまり上等でなかった多くの魔女たちが、そうやって自分自身の創りだした妄想にとりつかれて自滅していきましたよ」

と、静かにまいに言うのです。(P.139)

もう20年以上前に書かれた本ですが、魔女を目指す多感な少女だけでなく、全ての人に共通するとても大切なメッセージだと思います。

遅ればせながら、読めて本当に良かったです

「西の魔女が死んだ」梨木香歩作・新潮文庫



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「魔女の家」ならぬ、横浜山手の「エリスマン邸」。広さも家具も案外コンパクトで和みます









”満願”のラ・ラ・ランド

ドラマーを目指す主人公を極限まで追い詰める前作「セッション」に続く、デイミアン・チャゼル監督の「ラ・ラ・ランド」

女優を目指すミア(エマ・ストーン)と、ジャズ・ピアニストで自分の店を持ちたがっているセブ(ライアン・ゴズリング)。2人の夢の実現を絡めた、ミュージカル仕立てのロマンティックなラブストーリーです。

ラ・ラ・ランドとは、ロサンジェルスの、主にハリウッド・エリアの愛称。あるいは陶酔してハイになる状態。夢の国。なのだそうです(パンプレットより)

セブはプライドの高い甘ったれで、「もしやミアがピーターパンに振り回される話し?」と思わず身構えましたが、いやいや全然違う。半ばからの、ミアに対するセブの愛の深さに泣けました。。

(ここからはネタバレ注意です)

セブはミアのために安定を得ようと、意に染まない友達のバンドに入ります(でもミアのためとは言っていないから、伝わっていません)。バンドはラッキーにもすぐに人気が出ますが、それで人が変わったり浮気したりするわけでもない。

それなのにミアから、「あんな売れ筋の音楽やって、あんたは大切なジャズと店を持つ夢を捨てるのか」(大意です)と、そしられます(ひどい。。けど女性はこういうことを言いがち)。

でもそんなミアのお陰?(ミアは自覚していないけれど)で、セブは大人になって、店を開くお金を貯めて、ぐずるミアの背中をグイと押してやる度量を持ち、ついには自分の夢をかなえることもできた。

スクリーンの中で、セブはどんどんいい男になっていくのです

一方、ミアはとてもチャーミングだけれど、特別にきれいでもないし(男女で意見が分かれるところかも?)、きれいにしようともしていないし(エマ・ストーン偉い!)、夢をかなえるための努力も「セッション」と比べると雲泥の差。セブのことを本当に好きなのかどうかも、観ていてよくわからない(私個人の意見です笑)。 

けれども、セブにとってはミアが”特別”なのだということは、とてもよく伝わってきます。2人の関係としてはハッピーエンドではないけれど、それぞれの「夢と人生」という面から見ると、特にミアにとってはまさに満願。

それにしても、チャゼル監督も「セッション」のアンドリュー(マイルズ・テラー)の時とは全然違って、ほんとにミア(女性)には優しいなあ。。つくづく女って、男の大きな愛に無意識に乗っかって、好き勝手なことを言ったりやったりするものなのだと思う(ありがたいことですね)。最後にはミアもそれに気づいたみたいだし、お互いにいい方向に行けたのでよかったです

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満月でないのが少し残念。西行はたくさんの桜の歌を残しましたが、どのような想いを込めて詠んだのかなと思います




読み逃し文学…「ピーター・パンとウェンディ」

夜のロンドン上空やネバーランドを楽しく飛べる「ピーターパン空の旅」は、夢と魔法の国・東京ディズニーランドの中でも大好きなアトラクション。

けれどもよく考えてみると、アニメもちゃんと観ていないし、物語の中身をよく知りません。そこで遅まきながら、「ピーター・パンとウェンディ」(※)を読んでみました。

するとまあ。。なんと辛辣で夢のない。。

どの部分に、あるいは誰に対して痛みを感じたり目を背けたくなるか。まさに自分のコンプレックスがえぐり出される怖ろしい物語でした。

年齢的には既に大人で、ぜんぶ笑って読めるという人は、きっと「本物の大人」か「自分のことがよくわかってない」かのどちらかだと思います。

母性に対する過剰な期待がある一方、父性を全く信頼していないのもすごい。子どもたちに尊敬され、頼りにできるような大人の男が一人も出て来ないというのは、父性原理の強い欧米の文学としては珍しいのでは?

もしもピーターパンが自分で大人になることを選び取って、母性の庇護を受けずに頑張ったとしたらと思うけど、「それはまた別の話し」ですね。

(※)「ピーター・パンとウェンディ」 (新潮文庫) ジェームズ・M・バリー著 大久保寛訳
 

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きれいな桜もいきなり咲けるわけじゃないよね、と思います










作業の友

年度の切り替わりに向けて、不要になったものをいろいろ片づけました。

作業の友のDVDは、まず「12人の怒れる男」(ヘンリー・フォンダ版とTVのジャック・レモン版)。

「L.A.コンフィデンシャル」と久しぶりの「グラデュエータ―」(ラッセル・クロウの全盛期)。

「目撃者」「逃亡者」「今そこにある危機」(ハリソン・フォードも全盛期)。

「大統領の陰謀」(若きロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマン)ときて、

最後は「ロシア・ハウス」(渋いショーン・コネリー)。

「ダウントンアビー」は怖がって見ないくせに、と言われそうなラインナップですが、

「裏切りのサーカス」と「ユージュアルサスペクツ」まで行かずに、無事終了しました

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今年の桜はまだまだこれから。ゆっくり楽しみたいですね
























読み逃し文学…「モモ」

「沈黙」に続き、読み逃していた文学にコツコツと挑戦。

児童文学の名作として名高いミヒャエル・エンデの「モモ」は、

1973年に書かれた44年も前の作品ですが、

一時はブームのようにもなりましたね。


舞台はどこかの国の大きな街。

その外れにある打ち捨てられた円形劇場に、

ぶかぶかの服を着た「モモ」という名の女の子が住み着いて、

街の人や子どもたちと友達になります。


モモの特技は「人の話を聞くこと」。

話している相手の中にすっぽり入り込んで、

その人が本当に考えていることや本当の心を理解できる。

そしてモモに話しを聞いてもらった人は幸せな気持ちになり、

時に自分を見失うことがあったとしても、

再びしっかり取り戻すことができたのです。


こうして街の人々は幸せに暮らしていましたが、

いつのまにか「時間貯蓄銀行」の灰色の外交員が街で暗躍。

「自分はこのままでいいのか?」

と思う人びとを言葉巧みに丸め込み、

「無駄な時間を節約して貯蓄する」という契約を交わします。


この灰色の外交員というのが、とても頭が良くて弁が立ち、

スーツに帽子に細い葉巻、洒落た車と洗練されている。

本の裏には「『時間どろぼう』の男たち」とありますが、

どろぼうという言葉にイメージされるような泥臭さが皆無で、

いかにも「スマートでデキるビジネスマン風」なのが

なんともリアルで怖ろしい。


さらにポイントはこの「無駄な時間」というところで、

手間を掛けて仕事を丁寧にしたり、

友だちや恋人に会ったり子どもや家族と過ごしたり、

趣味を楽しんだり本を読んだり(!)、

寝る前のひと時をのんびりしたりというような、

およそ人の生きがいや心の豊かさにつながるようなことは、

ほとんど「無駄」と決めつけられてしまいます。


灰色の外交員と契約を交わした人は、

その外交員のことも契約のことも忘れてしまいます。

けれども「時間を節約する」ということだけは覚えているので、

常に急いで何でもするようになる。

そのためいつもギスギスイライラするようになる。

そうして徐々に外交員の魔の手は街全体を覆っていくのです。


ファンタジーの姿をまとった、実にリアルでシビアな物語。

それからどうなるかは、ぜひ本を読んでいただくとして、

現代の社会がとっくに「時間貯蓄銀行」に支配されていることは、

残念でも認めなくてはいけないでしょう。

だからこそ現代の私たちはいつも忙しくイライラせかせかし、

その一方でまさにガツガツと、

そうではない(と期待する)場所やつながりを求めるのだと思う。


そんな中でできることがあるとすれば、

自分を救ってくれる「モモ」がどこかにいないかと探すのでなく、

まず自分が大切だと思う人の「モモ」になろうとすること。

また自分がイライラせかせかしたら、

「また『時間貯蓄銀行』が何かキャンペーンをはじめたのかも」

とちょっと立ち止まってみたいです。


そして周りにイライラせかせかしている人を見たら、

「『時間貯蓄銀行』の外交員と契約しちゃった人なんだな」と、

少し距離を取って見ることも、

変に巻き込まれないようにするためにも大事そう。

(もしそれが大切な人ならば、「モモ」の物語をしてあげて、

外交員との契約のことを思い出してもらってもいいかもしれません)


また物語の中には、灰色の外交員たちに追われるモモをサポートする、

「カシオペイア」という亀が出て来ます。

この世の時間を司るマイスター・ホラ(時間の意味)の亀で、

亀だけに動きもゆっくりで強いわけでもないですが、

30分後の未来がわかるという不思議な能力を持っています。

そしてモモが大きな危険に飛び込もうとするとき、

「ダレカガキヲツケテアゲナクテハ!」

と、勇敢に行動を共にします。

こういう存在に私もなりたい、というのは多分この年だから思うこと。

やっぱり今読んでよかったです

















































































街路灯探訪

「世田谷駅前商店街振興組合」のできたてホヤホヤの街路灯。

発見した(?)のは先週なので、もうプチプチも外れて可動しているのではないでしょうか。

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東京・世田谷区にある代官屋敷から近いということで、「世田谷代官お膝元」と入っています。

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陣笠のモチーフが凝っていますね

家紋は彦根藩世田谷領主・大場家のものなのかな?

魅力的な街路灯を見ると心が騒ぐのは、もはや職業病







陶の雛人形

いずれも笠間の陶芸作家・山口由美さんの作品。

20年経っても変わらない愛らしさ

年度末の心を和ませてもらっています


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一番下のは灯りがつきます。

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確か特注で、できた時とっても嬉しかったなあと思い出します