「沈黙」2…”じいさま”の力

映画「沈黙」では、主人公のロドリゴ司祭は最初に2人の日本人に出会います。

ひとりは窪塚洋介さんが演じるキチジローで、

もうひとりが笈田ヨシさん演じるイチゾウ、”じいさま”です。


キチジローはすぐに逃げたり裏切る狡い人間。

”じいさま”は高潔で皆に信頼される老賢者。

この両極端のタイプの日本人に、異国から来たロドリゴはいきなり会う。

これはかなりすごいことではないかと思います。


キチジローは最後まで生き残ってロドリゴの周りをウロウロします。

(彼が現れると、自分の弱さを見せつけられるような気持ちになります)

対する”じいさま”は、映画が始まって間もなく殉教します。

本来なら、これだけでも理不尽でやりきれない。

けれども、不思議なことに”じいさま”が亡くなってもその存在感は消えず、

最後まで細い一本の筋のように残っている。

それがこの映画の底に流れる、微かな救いと希望のように感じました。

(原作ではイチゾウ=”じいさま”でなく、”じいさま”の殉教場面もありません)


ということを考えていたら、

「演出家・笈田ヨシ、《蝶々夫人》を語る」

というイベントが、20日に中央大学の駿河台記念館でありました。

その中でヨシさんは、

たとえば「月が出ている」ということをすごく上手く演じる役者と、

自分の存在を消して観客に「月」の姿を見せることのできる役者がいるとしたら、

自分は後者でありたいのだ、というようなことを言われました。


「沈黙」でヨシさんが観客に何を見せようとしたのかは、わかりません。

けれども、もしかするとそれは、

世の中にはどうにもならないこともあるけれど、

それを受け入れ、立ち止まらずに自分の道を信じて歩きなさい。

何事も自分次第だよ。

ということかもしれない、と思いました


※笈田ヨシさんが演出されたオペラ「蝶々夫人」については、
 ぜひ木下長宏先生のブログをご覧ください。 









 

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